ツアーレポート「ジョホールバルの蒼い月」

CHAPTER 6 Rising Sons

ハーフタイム。場所はマレーシアだが、トイレに行く人、喉を潤す人。いつものハーフタイムの風景である。1−0で折り返しはしたが、この後どうゲームが動いていくのか、勝つことを信じるしかないのだが、切ないような、不安の入り交じった雰囲気で、僕はその場から動かずにいた。Kは手短に用を足してきたようだ。そして、ハーフタイムは自分が試合のことをもっとも考える時間でもある。この間に日本はどんな作戦で行くのか、イランはどんな対策を立ててくるのか、試合の行方を握る大事な時間である。

日本の選手がピッチに現れたが、イランの選手たちが出てくるのがかなり遅かった。お祈りでもしているのだろうか。

後半が始まった。始まってまだいくつもプレーをしていなかった。井原のミスからマハダビキアがカット。ダエイがシュート、ヨシカツがこぼしたところにアジジがしっかり詰めておりゴール。名良橋追いつけず突っ立ってしまった。一瞬しーん。イランの選手たちがサポーターのもとへ駆け寄り喜びを爆発させる。でも僕たちも気を取り直し、すぐにニッポンコールが起こる。

失点直後は短い時間ではあったがイランが勢いに乗る。ハクプールのシュートを浴び、低いセンタリングが日本ゴールへ向かう。しかし日本は、ここで意気消沈しなかった。流れまで失ったわけではなく日本が攻めの型を作り続ける。

中田と名良橋がパス交換、名良橋がセンタリングを上げる。合わせた中山はシュートを撃てなかったが北沢が走り込みシュートを撃つ。しかしこのシュートは枠を外れる。

左サイド、相馬から名波のヒールを経て相馬が折り返す。ここでイランがクリアミス。再び北沢がフリーとなりシュートを撃つが、これも外れる。

カズがぎこちないトラップとキープから北沢に合わせる。北沢が胸でトラップ、落としたところを中田がボレーで狙うがアベドザデがキャッチした。

イランDF陣を突破しかけた中田が倒され直接FKを得る。カズが撃ったが枠を外す

アジジのスルーパスからマンスーリアン、シュート。ゴール前を横切る。

イランがメンバーチェンジ。アザディに代わりミナバンドが入る。

カズが左足でミドルシュート。ゴール前を横切り枠を外れる。

イランの緩慢なプレー、中山が突っかけボールを奪いコーナーキックに変わる。もう一度CKとなるが結局イランがクリアする。

マハダビキアがインフロント(アウトフロント?)で浮かせたセンタリング。秋田、名良橋の間からダエイが下がりながら打点の高いヘッド。狭いところに通る。決まってしまった…。うそ…。また静まり返る。だが時間はまだある。韓国のときのようにがっくりはこなかった。下を向いちゃいけない。繰り返し自分に言い聞かせてきた言葉。「絶対に諦めるな。」いっそう大きなニッポンコールが起こる。そしてまさに期せずして、すごい呂比須コールが起こる。

パスを受けた中田、リフティングで抜け出そうとしペナルティエリアすれすれで引っかけられ、FKを得る。名波がダミー、中田が蹴るがイランの壁に跳ね返される。

ミナバンド、左からミドルを狙うがこれは枠の外。

日本メンバーチェンジ。多分私はテレビよりもかなり早く気づいていたと思う。交替の番号が11を指していることに。カズが自分を指差す仕種には現場では気づかなかったがこの交替はいつか必ずやらなければならないことだ。カズだって途中出場、途中交替はジェノアでも何度もやっている。カズ、ゴンに代えて城、呂比須を投入。頼む、もうお前たちしかいない。城彰二コール、呂比須コールがスタジアムを包み込む。

負けたときのことが頭をめぐった。パスポートを持ったこの大観衆がお通夜のようにここを後にするのか、そうなったらただじゃ済まないぞ。UAE戦どころの騒ぎじゃなくなるぞ。きっと。しかし、サポーターたちも試合の流れが変わらず日本にあることを感じていた。専門誌によると後半15分頃と書いてあるが、私は後半20分を回ったあたりで気がついた。周りのサポーターも気づいた。そう、イランの足が止まったことに。いける、いけるぞ。1点ビハインドだが、日本のゲームだ。

城が呂比須をターゲットにして深いところへボールを出すが、呂比須はやはりコンディションが万全ではないのかトラップできず。この後もボールを奪われるシーンが目に付いた。

北沢から城へ、城が足の裏で自分の後ろへ転がしたところに中田が走り込みシュート、しかし外れる。

中田が左サイドの相馬へ、相馬から名波へと渡り、名波がセンタリングを上げるが呂比須のヘッドはバーの上。

中田のFK。DFがクリアしたボールを後方から井原がシュート。アベドザデがキャッチ。

相馬のセンタリング。城の左足は相手DFの脚へ。コーナーキックを得るがうまく攻めきれず。

ゴール前に上がった浮球にロペスが飛び出しアベドザデと1対1になるが、アベドザデが先に追いつく。だんだんサポーターのイランに対するブーイングも凄絶になってくる。太鼓を打ち鳴らし罵声を浴びせる。しかしそれは、日本に対してのものではない。

名良橋から呂比須へ、落としたボールを城シュート、決定機であったがアベドザデがブロック。一段と大きくなるニッポンコール。

私の右で応援していたKの、こっちを見る回数が増える。私を見ているのではない。私の方向にある時計を見ているのだ。この時計はスコアによって速くも遅くも進む。だんだん時計の進み方が速く感じるようになってきた。

相馬のドリブルから日本はCKを得る。CKはクリアされイランのカウンターになりそうな場面だったが、山口がボールをカット、名波から左タッチライン際にいた中田へ、中田はちょっとルックアップして浅い位置からクロスを上げる。魂と殺気が込められたボールだった。城が反応、強烈なヘッドがイランゴールに突き刺さる。ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーール。やったーーーー、同点だ。がっくりしているイラン選手もいたが残り時間はまだある。こうなりゃ一気にたたみかけるぞ。帰国してからビデオで見るとすっげえシュートだと思った。この一発で城がブレイクしたんじゃないかと思えるほど見事なゴールだった。

山口から中田と渡り城は背中から来る格好でトラップ。相馬に戻しゴール前に放り込む。イランのクリアは不完全でクリアボールを北沢がボレー。相手DFに当たりCK。アベドザデは足がつったらしい。しかし足をつるほどの気温ではない。イランはナムジュが退きモディルスタが入る。中田のCKはアベドザデが1度ファンブルするもイランがクリアした。

右サイドから切れ込んできた名良橋が倒されFK。これを名波が蹴ったが秋田のヘッドはわずかに枠の外。アベドザデがまた時間稼ぎをする。

右サイドで続いた攻防から中田が左へ折り返し、城が落とした球がイランDFに当たるが城に戻ってきて即シュート。しかしこれもDFに当たってしまう。

ダエイ、トラップミス。しかしアジジが走り込んでおり右足シュートを撃つがこれは枠の外。

名波のパスを北沢がポストになり中田へ、中田が突破を試み倒されながらもボールをキープ。右にいた城に出すが城はペナルティエリアで倒される。ハッとするプレーだ、PKか!しかし笛は吹かれず。Vを見ればPKのような気もするが現場で見てて「これは取れないだろうな」とは思った。フジテレビのアナウンサーとBS1のアナウンサーのコメントが対照的だった。僕はBS1のアナウンサーに近いことを思っていた。そう、「早く立て、次だ、次、立つんだ城!」残り時間も少ない。

名良橋へのファウルで得た間接FK。中田はすぐプレーを始め名波が左足のミドルを撃つ。すぐ入らないって分かったけどアベドザデが辛うじてはじきCKを得る。CK、秋田にニアで合わせるがその前にアベドザデキャッチ。

北沢が浮かせたボール、城が頭で合わせるがクロスバーの上。

ここまで遅延行為を重ねてきたアベドザデについにイエローが出た。だが、レッドだけは出して欲しくなかった。10人になったら本気で固められてしまう。

呂比須、中田、北沢と細かくつないで中田から相馬、相馬のクロスに城低い姿勢で飛び込むも外れる。

後半終了。スリリング過ぎる展開にKは心臓に来ているようだ。私は心臓は大丈夫だったが、かなり消耗してきた。ゲータレードはなくなり、龍泉洞の水しか残っていない。

CHAPTER 5

CHAPTER 7

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