MONO-LOG@UK


You'll Never Walk Alone・スタジアムの音声

英国のサッカー中継を見ていると、観衆の歓声が「ひゅー」といった感じの高音で聞き取れますが、実はスタジアム内ではすさまじいだみ声とどら声が行き交っています。はっきりした音声を拾うと、下品すぎて放送に耐えられなくなってしまうからなのか、技術的に拾えないからのかは定かではありませんが、テレビ中継の実況で聞く音声と、実際にスタジアムで聞く音声はかなり違います。チャンピオンズリーグを観戦するため訪れたアンフィールドスタジアム。座ったのはゴール裏。ただ、有名な「KOP END」とは反対側でした。逆サイドには数名のディナモ・サポーターが来ていましたが、イタリアのアウェーサポーターのように隔離されている様子はありません。チキンハートの私は外の屋台でFish & Chipsを買いそびれたため、やたらでっかいコーラとハンバーガーをスタジアム内の売店で買いました。私の右隣はマンチェスターと同じく小さな坊やが座っていました。マンチェスターのときとは異なり、遠距離サポーターではなく、地元の親子連れ。既にすっかり洗脳されており、直前のリーグ戦でハムストリングを痛め欠場が決まったマイケル・オーウェンがピッチを歩いているのを真っ先に見つけてお父さんに「あ・オーウェンだ」と報告していました。「4歳のころ親父に連れられて、初めてアンフィールドに行ったんだ。それからずっとそんな週末が続き、気がついたらリバプールのサポーターをやっている自分がいたってわけさ」という、お決まりのパターンをこうやって歩むんだなあっていうのが実感できました。左隣はスキンヘッドの一見怖そうなお兄さん。ギネスかホルステンをジョッキで5杯は飲んだと思われるくらい酒臭かったです。ぐおん、ぐおん(「Go On」?)、と張りのある声が超ビビル。そして「スタンド(我慢だ!)」というつぶやき。はじめは日本人の私を怪訝な目で見ていましたが、私が周りの地元の人たちとほとんど同じリアクションをするため、じきに気にならなくなっていたようでした。サミー・ヒーピアが強烈なスライディングタックルを決めたときは彼も私も大声で「イエー」と同時に大喜びしました。いちばん楽しみにしていたオーウェンが欠場ということで、注目はスティーブン・ジェラードだったのですが、印象に残ったのはノルウェーのリーセとフィンランドのヒーピアという、W杯にはやってこない選手たちでした。斜め後ろにはビデオカメラを回している中国人もいました。私とスキンヘッドの前にはカップル。女の子は寒くないのかノースリーブ。しかも試合中もいちゃつきっぱなしで試合終了前に席を立ち、スキンヘッドがなにやら毒づいていましたが、どんなことを言ったかは私にも容易に想像がつきました。キックオフ前にはみんな立ってYou'l Never Walk Aloneを歌いました。私も半分くらいは歌えるので一緒に歌いました。スタジアムの観客席の位置を問わず、全員が立ち、全員が一斉に歌うのです。男も女もスキンヘッドも坊やも、そして私も。とてもジーンとしました。この旅で、いちばん感動的な瞬間でした。リバプールを、アンフィールドを選んで、本当に良かったと思いました。帰り道、途中迷子になり、人通りのない夜の住宅街を30分くらいさまよい、本気であせりましたが、高台にあるアンフィールドからマージー川に向かって坂を降り、あとは川沿いに市内中心部までいけばいいかと、気丈に歩きましたが、川沿いにある駅のホームの明かりを見つけたときは気が抜けそうになるくらいほっとしました。住宅街のオレンジ色の街灯が、今も記憶に残っています。

イングランドだった理由・そしてオフサイドを反則にした国

長いこと海外にも行っていない。久しぶりにヨーロッパでサッカーを見たい。カイシャにもずいぶん貸しができた。そろそろ休暇の取り時だろうと、今回の旅行を計画しました。半年ほど前に旅行代理店にお願いしたのですが、ちっとも動いてくれず、この時期になりました。春先はチャンピオンズリーグなどが佳境に入り、試合は面白いのですがとにかく寒い(うちにいるよりはバルセロナやバレンシアに行けばかなり暖かいが)ということで、まだ夏休みと称した休暇が取れる9月の旅行を決めたのです。今まで行ったことがなく(ヒースロー空港は乗換えで来たことがありましたが)、表記が英語なんで楽、治安が良く一人でも何とかなりそう、そして、大きな町であればどこにでも箱型のサッカースタジアムがあり、私のスタジアム写真館の展示も少ない旅行期間で一気に増やせるということで、イングランドに決めたわけです。もちろん、そこでサッカーを見るのも目的です。ただ、20代の頃のように1日2試合とか、サンデーマッチもサタデーマッチもUEFAカップも、と欲張るような体力はありませんので、見たい試合とスタジアムを厳選しうまいことスケジュールを組めるのがこの時期だったということです。試合のチケットを取るのも大変ですしね。そのイングランドの印象は、本当にフェアプレーの国なんだなと。どこの駅だかはもう忘れましたが、おばあさんが地下鉄の扉にバッグを挟めて困っているのを見たアンディ・コールに似たお兄さんが地下鉄の扉を強引にこじ開け、そして何事もなかったのように去っていきました。ビクトリア駅では、地下鉄へ下る階段で乳母車を重そうに降ろしているお母さんにヤープ・スタム(イギリス人ではないが)に似たスキンヘッドの怖そうな兄さんが乳母車の片側を持ち、階段を下り終わると何事もなかったのように去っていきました。紳士の国、フェアプレーの国、オフサイドを反則にした国の精神を垣間見ました。この国では、日常生活でもオフサイドは反則です。いや、正しくはこの国の精神がサッカーに持ち込まれたということなんでしょうが…。私?荷物が多く手伝ってあげられませんでした。レディーファーストとかは徹底して守りましたが。

相容れない価値観

リバプールでのチャンピオンズリーグ、リバプール対ディナモ・キエフでの試合の一コマ。キエフの選手がリバプールからボールを奪い、ドリブルで中盤を駆け上がり、センターラインを越えたあたりでリバプールの選手がファウル、プレーがとまるシーンがありました。既に20mくらい走られており、シュートまで持っていかれたり、あるいはそこまで行かなくてもこのプレーでディナモにリズムが生まれてくるおそれを考えると、正しいプレーだと思ったので、私は拍手をしました。しかし、このプレーに拍手をしたのは、私一人だけでした。とにかく、いくらサッカー的に正しくても(=勝つために正しい選択をしたとしても)、笛がなるようなプレーは絶対に認めないのがイングランドの流儀なようです。対極にあるのが大西洋をはさんだ南半球にある国でしょうか。2002年6月7日、またしてもこの両国が対戦するわけですが…。

サンドニのグッズ売り場に注意!

イングランドでは、トラブルらしいトラブルに遭わなかったのですが、半日だけいたフランスでは残念なことに詐欺にあってしまいました。他の旅行者のためにもあえてはっきり名指しで掲載させていただきます。表題のとおり、スタッド・ド・フランスのグッズ売り場です。もともとお土産の類は値段が高いと思いつつも記念だしということで買って帰ったのですが、ホテルに帰ってきてみると、買ったはずのキーホルダーが一つ少なかったのです。確かに店員の態度も悪く(女性)てなんかいやな雰囲気だったのですが、とてもがっかりしました。これだったらお釣りをちょろまかされるほうがまだましだと思いました。サンドニの名誉のために言っておけば、スタジアムツアーの受け付けや入り口の係員の応対はよかったです。

ホテル三態

英国では合計3か所のホテルに宿泊しました。ロンドンに5泊(2か所)、リバプールに2泊(1か所)しました。せっかく英国に行ったのにもかかわらず、B&Bはなんか煩わしそうということで泊まりませんでした。最初に泊まったのはTホテル。ヴィクトリア駅に隣接していて、古いガイドだとグロブナーとかいう名前で経営者が変わったようです。歴史を感じさせる外観でヨーロピアンテイストなのはよかったのですが、お化けが出そうで不気味でした。室内の写真を撮っていて「なんかお化けが出そー」とか一度思ってしまうと、それが頭から離れなくなってしまい、鳥肌立ちまくりでした。極めつけは、夜中に部屋の電話が一回だけ鳴って切れたこと。さすがにびびりました。4泊もしたのですが、さすがに最後のほうは慣れて平気になりましたけど…。次に行ったのはリバプールのランドマークとされるAホテル。ここもヨーロピアンなのですが、歴史あるホテルが放漫経営してきて今慌ててサービスがよくなっているという感じでした。ここは建物は立派なのですがミシュランとかで見かける例の星なりベルなりの数はなんと0。私は貧乏なシングルの部屋ということで一番奥の部屋だったのですが、そこまで行く途中、部屋の扉が曇りガラスで、室内の明かりがもろに見える部屋があったり、しかもなんと自分の部屋の内カギがなく、チェーンをはめるのならいいのですがチェーンを扉の取っ手の輪に無理やりはめ込む(すごく大変)ことでカギ代わりにしているような部屋でした。これでは星0も止むを得ないかなと感じました。最後に泊まったのはあの「Cheslsea Village」。チェルシーが経営する、スタンフォードブリッジスタジアムに隣接したホテルです。出来たばかりでとてもきれい、室内も日本の高級ホテルのような感じで快適でした。室内ではNHKの衛星放送も見ることができました(でもなぜか音声が聞こえなかった)し、前の2か所と比べて従業員の応対もいちばん良かったです。ロンドンはホテルの価格が高いのですがそれでもホテル間の競争は激しいらしく、インターネットの割引プランで泊まることが出来ました。それでもやっぱりロンドンは高いです。もし懐に余裕があるのでしたら、ロンドンの繁華街からはちょっと外れますが、とてもきれいな「Chelsea Village」はおすすめです。

原発と環境

英国では国内の移動はすべて電車でした。Virgin Railとか、Mergey Rail、Great Westernとかの運行会社の電車に乗りました。区間は、ヒースロー空港〜ロンドン・パディントン(「ヒースロー・エクスプレス」というやつです)、ロンドン・ユーストン〜マンチェスター・ピカデリー、ロンドン・ユーストン〜リバプール・ライムストリート、リバプール・ライムストリート〜マンチェスター・ピカデリー、マンチェスター・ピカデリー〜ホーウィッチ・パークウェイ、ロンドン・パディントン〜カーディフ・セントラルなどでほかにユーロスターや地下鉄、マンチェスターではメトロリンクという路面電車みたいなやつにも乗りました。前置きが長くなりましたが、これらの電車に乗って風景を眺めていると出くわすのが原発です。ちょっとギョッとしますが、本当にしょっちゅう見かけます。ほかの乗客は慣れているのかとくにリアクションはありませんでした。確かに、原発がなければ私はこの電車に乗ることも、チャンピオンズリーグを見ることもできません。ここで原発の是非を問うつもりはありませんが、現地の電力会社も、新エネルギーの開発には取り組んでいるらしく、地下鉄の階段の壁にあるポスターには風力発電を推進していますというものもありました。ごみの捨て方は昔の日本と同じでとにかくめちゃくちゃ、可燃不燃もあったもんじゃありません。捨てたのを何とかするのも誰かの仕事であって、その仕事をしている人はそれで食っているんだと言わんばかりの風情でした。地下鉄の中も新聞が散らかっており、誰も自主的に片付けるふうではありませんでした。

車、携帯とPC、テレビ

海外に行くとどうしても日本製のものがあるかどうか気になって、周りをチェックしてしまうのですが、私が英国に行ったときの印象を。まず車ですが、高級セダン と軽自動車以外、フェアレディZやRX−7、MR2といったスポーツカーからリッターカーまでほとんどの日本車が走っているといって間違いないでしょう。 いちばんたくさん見たのはマーチ(現地では「MICRA」と呼ぶらしい)かなぁ。あとヴィッツ(現地名は「ヤリス」でしたっけ)も増えてきているのかなって思いました。RVや1BOXの割合はかなり低いです。私の愛車、スバルのレ○シィは、現行のモデルをボルトンで1台見かけただけで、1代前の私と同じやつはついに見かけませんでした。でも、ヴィクトリア駅のマックで財布からお金を出そうとしたら 、黒人の店員が私のスバルのクレジットカードを見つけて指差し、「Oh SUBARU ! I LIKE SUBARU ナンタラカンタラ」と言っていました。おそらくWRCでインプレッサが活躍しているからスバルが好きなんだろうなと思いました。 ちょっと嬉しい出来事でした。携帯はモトローラ、ノキア、エリクソン。メールを打っている人がいますが、通話が中心。iモードみたいなのをやっている人は見かけませんでした(あるのかないのかもわからん)。また、着メロはほとんど単音で和音も少しあったようですが 和音は1回か2回しか聞きませんでした。日本は独自の進化を遂げているのかなって感じました。パソコンは電車の中でノートを使っている人を観察したのですが、1台コンパックらしきパソコンを見かけた以外はすべて東芝、 シェア広告に偽りなし、むしろ謙虚なくらいだなという印象を受けました。ただ、5〜6回見かけたノートパソコンで仕事をしている人は1人だけ。あとはDVDを見たり、ゲームをやっている人ばっかりでした。テレビはガイドに書いてある通りドラマばっかり、私が泊まったホテルではCNNが見られるのでニュースも見るには見れました。いちばん楽しめたのは日本でもやっている「クイズ・ミリオネア」のオリジナル版でしょうか。「Final Answer ?」と確かに言っていました。でも、日本版の司会者と違いあそこまでしつこくはありませんし、緊張が高まる場面でCMが入ったりすることもありませんでした。最後に泊まったChelsea Villageでは、宿泊当日にChelseaがアウェーでUEFAカップを戦ったのですが、部屋では実況のラジオが聞けただけでテレビ中継はありませんでした(スポーツバーでは実況するらしいが)。でもほかのチャンネルでAston Villaの試合をライブで見ることができました。でもヴィラは負けてしまいました 。BBCのニュースではサッカーの結果をスポーツコーナーで試合のダイジェストともに流します。ニュースはUK全体をカバーするため、スコットランドの試合の結果やVもオンエアしていました。Chelsea Villageでは、NHKの海外向け衛星放送も見ることができました。向こうで夕方にNHKにチャンネルを合わせると、日本の翌朝のニュースが見られるという、奇妙な現象が体験できます(当たり前のことなんですけどね)。

制服

今、モーニング娘。が制服姿でロンドンらしき街をバックにしてCMをやっています(これだけでも親近感が溢れちゃう Be in Love)が、私が英国に着いて、日本と英国とでいちばん違いを感じたのは「コギャル(死語じゃないよね)がいない」ということでした。また、到着が週末だったこともあってか、東京の電車のように中学生や高校生はほとんど見かけませんでした。ただ、制服自体はあり、リバプールのアンフィールド付近では制服を着たおそらく中学生がけっこういました。学校によっては日本の紺よりもかなり鮮やかな日本代表のユニフォームの色に近いような青いブレザーとかもありかわいかったです(私は変態ではありません。たぶん。)。現地のサッカー好きは、試合のある日はおそらく自分が応援するチームのユニフォームを着るのでしょうが、街中にはフランス代表、レアル・マドリー、バルセロナなどのユニなりウェアなりを着ている裏切り者もいました。

勝負!

いつのことかはもう忘れてしまいましたが、日本のサッカージャーナリストがこんなことを書いていたことがありました。曰く、「日本の観客は、ゴールが決まったときに喜ぶタイミングが、海外の観客に比べてワンテンポ遅く、そのことが、実際のプレーにおいてのゴール前でのスピードの差に 投影されているのでは、もっと言えばそれが世界と日本のサッカーの実力の差ではないか」という内容でした。少なくても自分に関してはそんなことはないはずだと思い、自分のリアクションが本場イングランドに比べてどうなのかということを確かめてみたかったのです(自分でもバカだなあと思います)。イングランドでは9月22日にプレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド対イプスウィッチ・タウンの試合と、9月26日のチャンピオンズリーグ、リバプール対ディナモ・キエフの試合を見ました。長いものには巻かれるたちなので、周りの雰囲気を見渡してそれぞれホームチームを応援、3回ゴールシーンに立ち会うことができました(ユナイテッドの試合は4−0でしたが、電車の時間の関係で2−0の時点で帰りました)。1回目のシーンはほとんどすべてのサポーターよりも私の「イエース」がスピードで勝りました。ただ、これには訳があり、相手によってゴール際からクリアされたボールがゴールと認められたようなゴールだったため、周りの人は入ったと思わなかったようです。本場の人たちはゴールネットが揺れた瞬間を基準に反応するようです。もちろんゴールをゴールと自分で判断してリアクションした私のほうが正しいんだと思います(笑)。2回目は完全に私の負け、ゴール前の混戦でスールシャール(テレビでは「ソルスキア」とも言っていた。現地のアナウンスは「スーシャー」)がつめていたことに気づきませんでした。3回目のリバプールは互角でした。チャンスがくるとみんな立ち上がって「準備」をするのですが、準備の甲斐あってリトマネンが決めてくれました。ゴール裏のコアな連中の中でイーブンだったので自分ではまあまあかなと思いました。というわけで、「リアクションのスピード対決インニングランド」はドローに終わりました。ちなみに日本での私のリアクションは「べらぼーに速い」と言っていいと思います。札幌のキリンの時には私の周りで私と同じくらいの速さで反応している人は誰もいませんでした。そういう状況ですから、冒頭に述べたジャーナリストの言っていることはある意味正しいのかもしれません。

出発を決めた理由

私が旅行をしたのは、国内での前泊を含めると9月20日から29日の10日間でした。ここにいまさら記すまでもありませんが、9月11日、米国で同時多発テロが発生、それからしばらく米国の空港は閉鎖され航空便もすべて欠航する事態が続き、空路が再開されてもテロを恐れてか旅行客も減少、採算のめどが立たずフライトも減便される事態になっています。こんな状況下で旅行を計画している人は多分ほぼすべて、旅行の行程で自分が何かのテロの巻き添えになったりしないかということを考えるのではないでしょうか。私の行き先はイングランドであり、テロ事件が発生したわけでもなく空の便も平常どおり運行されていましたが、こういった有事ではリーダーシップを発揮する大英帝国ということで、テロの矛先として米国の次に危険なんじゃないかという危惧があったのも事実です。しかし、あの恐ろしい映像をブラウン管で見たとしても、私たちの日常はいつもと変わりなく営まれ、それは英国とて同じであり、チャンピオンズリーグの試合が1節延期になっただけでフットボールも続いていました。私ももちろん、テロの危険とかこんな世界が悲しみに包まれている時期に脳天気にサッカーの試合を見るなんてことしていいのだろうかという後ろめたい気持ちとかもありましたが、今回の旅行はツアーじゃなく自分で航空券やホテル、試合のチケット、ユーロスターとか英国鉄道パスなどを個別にネットで手配したのでキャンセルするのが大変であり、そのお金もバカにならない(人命と比べるべくもないのは自分でも一応わかりますが)、そして何よりも、普通に生活が営まれている地域に、普通に飛行機が飛んでいる状態で、怖いからといって旅行を取りやめてしまうのは、自分がテロに屈したことを自分で追認するような気がして、そしてそれは自分にとっては許しがたいことであったというのが旅行に踏み切らせた何よりの理由だったと思います。プライバシーの関係で詳しい話はできませんが、私の知っている方で今回の同時多発テロの影響を直に受けた方が2人います。自粛したほうがよかったのかもしれません。またもちろん、飛行機も飛べないような状況であったら旅行に行ったりもしません。ただ、こんな状況でもサッカーは生き続けている、そして私も生きている限り、自由がある限り、サッカーとともにある、そのことを示したかったんだということのような気がします。そして私は幸運だったという言い方もできるでしょう。私が英国に滞在している間のCNNの下フレームのテロップは「WAR AGAINST TERROR」でした。私が帰国した後、このテロップは「STRIKES AGAINST TERROR」に変わりました。

カーディフのおじさん

英国滞在の最終日、帰国便はヒースロー空港を夜に出発するので、昼間、電車に乗ってウェールズのカーディフまで行きました。カーディフには1999年に行なわれたラグビーのワールドカップのメイン会場となった「ミレニアムスタジアム」があり、ぜひ見ておきたいと思ったのです。ロンドン・パディントン駅で荷物を預けてカーディフのさらに先のスウォンジー行きの電車に乗り、2時間ほどでカーディフに到着しました。ミレニアムスタジアムはカーディフ・セントラル駅のすぐ近くにあり、私のような方向音痴(意外と方向音痴。階段の踊場があったりするとしょっちゅうわけがわからなくなる)でも簡単に発見できました。スタジアムの西側に堀というか池というかがあり、その対岸からスタジアムの写真を撮っていました。対岸の水辺はベンチなどがあり、休息、散策ができるようになっているのですが、そこでひなたぼっこをしていたおじさんが私に向かって「あっちから撮った方がいい写真が撮れるよ」と教えてくれました(というかそのような主旨のことを言っていたんだと思う)。私が指差して「あっちの方?」と聞き返すと「そうだよ」と笑顔で答えてくれたので「どうもありがとう」と言ったら、親指を立てて「イエー」とか言っていました。実際、反対側に行っても逆光できれいには写りませんでしたが、確かにいい構図で取れる場所がありました。ちょっとした出来事でしたが、これだけでカーディフの、ウェールズの印象がとても良くなりました。

ユーロスター

今回の旅行の大きなトピックのひとつがユーロスターに乗ることでした。飛行機嫌い(でも誰かほどではありません。乗るときは乗ります)、電車大好きの私にとって、ユーロスターは憧れの電車。わくわくしながらロンドン・ウォータールー駅に着きました。ノリは完全に飛行機、一般の旅客は切符というよりは搭乗券を持って自動改札を通過します。私はブリットレイルパスだったので、有人の改札しか通れませんでした。その後の手荷物検査、金属探知機なんかも飛行機と一緒でした。乗車時間になりホームに出て車両を見たときは「おー、ユーロスターだ」とちょっと感動しました。ただ、電車って何でもそうなんですが、乗ってしまえばどうってことないんですよね。なんか山形新幹線みたいでした。もし乗車するなら、ぜひ一等車に乗り、贅沢したほうがいいと思いました(2等でした。貧乏なんで)。そうすればご飯も出ますからね。ただ、海底内での爆発テロを警戒してか、トンネルに入る前に20分近く停車するので、時刻表通りには到着しませんでした。到着地のパリ北駅では、別にパスポートにスタンプをついたりすることもなく、拍子抜けでした。せっかく入国したんだから記念なんだしスタンプつけやとか思ってしまいました。帰りの便の手荷物検査なんかは結構いい加減でした。英国は入国審査が厳密なので、ウォータールー駅のパスポートコントロールはしっかりやるのですが、ヒースロー空港に比べて詰問調でもなく、簡単に通れました。ベールをかぶったイスラム系の女性のグループは時節柄か、なんかいろいろ突っ込まれていました。EU外の中では、日本人はまださほど警戒されていない印象でした。淡々と過ぎたユーロスターで行くパリ日帰りの旅でしたが、それでもいい思い出になりました。私が帰国した後、ヨーロッパ遠征中の日本代表がリール駅でユーロスターの到着を待つ写真がスポーツ紙に掲載され、「ああ、日本代表もオレと同じユーロスターに乗ったんだ」と思うと不思議な感慨がわいてきました。

マージーのガキ

9月26日夜、チャンピオンズリーグを見るために、アンフィールドスタジアムに行きました。マージーレイルという地元の鉄道にのりSandHillsという駅で降りて、そこからマージーレイル社が一生懸命PRしている「サッカーバス」というリバプールとエバートンの試合が行われる日に運行されるバスでアンフィールド近くまで行きました。途中、エバートンのスタジアムである、グッディソン・パークがあったので、そこまで戻って写真を撮り(デジカメしか持って行かなかった)、アンフィールドに辿りつきました。スタジアムの周りを一周し、プログラムを買って、さて中に入ろうかというとき、小学生くらいの子供たちが5〜6人、「チケットないか」と聞いていました。初めは無視していたのですが、いつまでもしつこくつきまとってくるので「ごめん、オレ、チケットは1枚しか持っていないんだ」と話したら、今度は私のカメラを見つけ「カメラだカメラだ。写真写真」と言ってきたので、「君たちの写真を撮るの?」と聞いたら「撮って撮って」というので「シャシンヲトリマショー、カシャカシャカシャ」と言って撮ってあげました(ゴメン、最後の部分はネタ)。でもちゃんと写っていませんでした。もう日が暮れてフラッシュも弱いやつだったんで…。南欧のほうに行くとモデル料やら肖像権料やらをせしめたりカメラごとひったくるろくでもないガキもいるようですが、この子たちには悪気はないようでした。

悪いやつら

英国は治安も良く、ガイドに書いてあるようなトラブルにもまったく遭わずに済んだ今回の旅行ですが、それでも悪いことをするやつはやっぱりいます。最初にみたのは、ロンドン・ユーストンからマンチェスターに向かう列車の車内で。発着ダイヤのせいかその列車は「マンチェスター・ユナイテッド・エキスプレス」といった感じで、ユナイテッドのサポーターがたくさん乗っていたのですが、予約の札(椅子の背もたれのてっぺんに挟んである)のない席に私は座っていました。私の隣に中年の男が座りましたが、どうも挙動が怪しい。車掌の姿を見るや、即座に席を立ち、トイレやビュッフェに行くふりをする。すぐわかりました。彼が無賃乗車なのは。たぶん周りの人も気づいたと思います。はっきり言ってバレバレ。しかも、検札途中で自分の席に戻ってきてしまい「Ticket Please」と詰問され、どっかに連れて行かれました。その後どうなったかはわかりません。常習犯のような感じでなんか薬物を使用していそうな雰囲気もありました。次は万引き。ビクトリア駅の近くにあるセインズベリー(スーパーね)だったと思いますが、陳列してある商品を思いっきりセーターの内側に隠しているやつがいました。つかまったときのリスクを思えばとるほどのもんでもないような品物で、手癖というか、病気みたいなものなのかなと思いました。同じことをやっているやつをリバプールのテスコでも見かけました。あとは、地下鉄のワンデーパスを夜にもらおうとたむろしているやつ、ホームレスもいました。おめー、英語しゃべれんじゃん、働けよとか思ってしまいました(違うって)。それから、アーセナルのスタジアムを見に行ったとき、ガラの悪い黒人少年が何か私に向かって叫んで、なんかあるからこっちに来いよ、早く急げ見たいなことを言っていました。うざったいのでうるせえとか言ったら、すぐいなくなりました。そのくらいでしょうか…。仕事以外で話しかけてくるやつにろくなのはいないということですが、みんな私よりも小さく貧相で、相手がひとりなら武力衝突しても十分何とかなりそうでした。今回はたまたまなんでしょうけど。それと、まあ、どこでも言えることなんですが、夜に一人で歩くことはなるべく避けたほうがいい、といったところでしょうか。

アバディーンの父子

9月22日、土曜日、現地2日目、この日のイベントはマンチェスターユナイテッドの試合を見ることでした。午後3時キックオフの試合でしたが、チケットは午前10時にならないと入手できなかったので、午前にロンドンを発ち、午後2時過ぎにマンチェスターのホーム、オールド・トラフォードに到着しました。私はここでひとつのイベントを企てていました。それは、一昨年マンUが来日したときの写真を、地元の人にプレゼントして喜んでもらおうというものでした。座ったのはメインスタンドの一番端。隣は通路もないままコーナースタンドの壁になっており、反対から人が来たら圧死するような場所でした。隣は「BECK」というマフラーを巻いた70歳位のご婦人(ベッカムのファンだそうだ)、私のすぐ前にはレッドデビルなフェイスペイントをした坊やがいたので「写真を撮っていいか」と例の中学生英語で聞いて、OKが出たので写真を撮らせてもらいました。そして、彼にお礼ということで写真をプレゼントしました。坊やのお父さんはとても喜んでくれて「俺たちはアバディーンから来たんだ。この坊主はマンUの試合を初めて観るんだぜ」と話していました(坊主とは言っていないが)。私が「どうしてアバディーンを応援しないんだ」と聞いたら「いや、それはその…」と答えに困っていました(マンチェスターで暮らしていたことがあるらしい)。アバディーンからマンチェスターなんて、八戸や青森から浦和に行くようなもんでしょうか。そんな遠来のファンも(オレはもっと遠くから来た)いるような世界的な人気チームなわけですから、ベッカムを出してほしかったなぁ。CL後のイプスウィッチということである程度覚悟はしていましたが…。

リバプールで

9月26日はリバプールのアンフィールドでチャンピオンズリーグ、リバプール対ダイナモ・キーエフ(現地発音のまま)を観たのですが、レフェリーはあのイタリアのコリーナさんでした。マッチデイプログラムを見るとダイナモのメンバーとしてウズベキスタンのシャツキフがエントリーされていました。初めて東欧のクラブチームを見ましたが、さすが名将ロバノフスキ、よく組織され、なおかつスピードのあるいいチームだという印象を受けました。それだけ。

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